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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「駆は夏祭り行くん?」

「そうだなぁ…行こうかな。

 去年は結局ちゃんと楽しめなかったし」


 高瀬に習ってテーブルの上を片付けなが

ら、本当に去年は大変だったと自然と苦笑

いが浮かぶ。

 来年こそは楽しもうと去年の夏祭りの後

で思ったことも思い出す。


「よっしゃ。ほなら屋台全制覇いくで」

「…クロードはカイル連れてこないなら一

 緒には行かない」


 グッと拳を握りしめてクロードも意気込

んでいたが、そこに水をさしたらクロード

の表情が一変した。


「はぁっ!?

 なんでそこでカイルの名前が出てくるね

 ん!」

「行かないったら行かない。

 むしろカイルと行きたい、俺は」


 散々だった去年の夏祭りを思い出した

ら、むしろカイルを外すなんて考えられな

いだろう。

 クロードは暫くブーイング起こしてたけ

ど俺が折れないのを悟ると諦めたのかカイ

ルに電話をかけ始めた。

 その苛立ちで染まった視線なら何か切れ

そうな鋭さを帯びていて一抹の不安は覚え

たけれども。


「あ、そうだ。加我」

「え?」

「どうした?」


 兄妹の声がハモった。

 迂闊だった。

 どっちも“加我”なのを忘れてた。


「えーっと、ごめん。

 誠一郎は夏祭りどうする?」


 1年の春から付き合いが始まっているか

らもう2年目だ。

 名前で呼ぶくらいはいいかな、と思って

呼んでみたら加我の方も気にしたふうもな

くあっさり頷いた。


「駆たちが行くなら」

「そっか。

 じゃあ後で駅前に待ち合わせしよう。

 …樹はもう約束あるのか?」


 誠一郎だけ名前呼びに変えるのも…なん

ていうのは言い訳で、高瀬とも場の勢いで

呼び方変えられたりするんだろうかと冒険

してみた。

 平常心装っているけど、内心は結構ドキ

ドキしてしまう。


「あるけど乃木達だから、合流しても嫌な

 顔はしないと思うよ。

 集合場所も駅前で同じだし、連絡してお

 こうか?」


 樹は一瞬驚いたように俺を見たけど、特

に嫌な顔はせずにもう一度スマホに手を伸

ばす。


「うん。

 あ、ついでに西門も誘ってみていい?

 来ないかもしれないけど」

「来うへんやろ。

 部屋でカビ生やしてそうやし」

「いくらなんでもそれは言いすぎだろ…」


 クロードの歯に着せぬ物言いに苦笑いを

浮かべて西門に夏祭りはどうかとメールを

打ちこんで送信する。

 すると打って響くようなタイミングで返

信がきた。


『暑い。
 ダルイ。
 混んでるの無理。
 眠い』


 他の理由はともかく眠いのに即返信でき

るんだろうか?

 とにかく面倒くさいから行かないオーラ

は文面から全面的に滲み出てるけど。


「西門はパスだって。

 じゃあ俺も一度家に戻って着替えてくる

 な?」


 さすがに丹前とか着てくるつもりはない

けど、昼間に外を歩いたしシャワーも浴び

てから行きたい。





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あきゅろす。
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