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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「じゃあいつなら空いてるん?」

「…明後日」

「なんでそないに不満たっぷりなん?

 傷つくわぁ」


 ムスッと小声で返事をしたら笑いながら

冗談を言われたけど、脅して約束をとりつ

けたくせにそれは棚の上らしい。

 まぁそれがなくても大人しく遊びに行く

つもりだったなら、とっくにクロードの新

居には足を踏み入れていただろう。

 それが実現してこなかったのは、クロー

ドと二人きりの状態で自宅に呼び出される

ことに底知れぬ危機感を感じていたから。

 兄弟とちょっと遠い親戚だから差別する

のかとクロードは不満げだった。

 でも、幼い頃から一緒に育って気心が知

れ本当に嫌がることはしない兄弟と、まだ

まだ知らないことが多くていざとなれば無

理強いも辞さない遠い親戚では天と地ほど

も差がある。

 少なくとも退路が確保できればまだ違う

のかもしれないけど、クロードにそんな隙

はないだろう。

 ただの同級生や親戚と付き合うのとは違

うから身構える、と言っているのにクロー

ドは聞き入れない。

 自分がいろいろと前科もちなのにそれも

都合よく棚上げしているし、それでいて自

分の都合で俺を振り回そうとするのは勘弁

してほしい。

 俺の感情とか都合とか無視してありのま

まの自分を押し付けてきて、それをそのま

ま受け入れろ、なんて。

 そんな言い分はもはや自己中テロだろう。

 しかもそれを嫌がっているのに抵抗虚し

くもう半分諦めモードで慣れてきている自

分を自覚する度に、これじゃクロードの思

うつぼだと溜息が漏れてしまう。

 こんな状況がいつまで続くのだろう?

 高校卒業するまで?

 それともクロードが飽きるまで延々と?

 ちょっと考えて、やめた。

 どう頑張っても気が滅入りそうだ。


「ちょっと入るねー」

「あぁ」


 ふすまの向こうから声がかかったと思っ

たら加我妹が戻ってきた。

 しかもさっきのTシャツ姿から一変して

何故か浴衣なんか着ている。

 起き上がってまじまじと見てしまったが

やっぱり浴衣姿だ。

 橙色の浴衣にワンポイントではあるがア

クセサリをしているから、古風なというよ

りは今時の女の子の浴衣姿だけど。


「浴衣なんか来てどこに行くんだ?」

「もー、何言ってるのよ。

 今日は夏祭りでしょ?」


 浴衣姿でパタパタと小走りで探し物をし

ながら、呆れたという顔で返事をしてい

る。

 でも加我のマイペースっぷりは通常営業

らしく、“あぁ、そうだっけ”とか呟いて

いる。


「そういえば夏祭りだったね。

 俺も一度家に戻らないと」


 高瀬はスマホで時間を確認したのかテー

ブルの上の片づけを始める。

 きっと高瀬のことだからクラスの女子か

ら引っ張りダコだったのだろう。


「あれからもう1年かぁ…」


 ふっと去年の夏祭りを思い出して呟きが

もれてしまった。

 あれからもう1年巡ってしまったのかと

思うと感慨深い。

 そりゃクロードの我儘にもいい加減に慣

れるわけだと変なところで納得する自分が

いる。





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