[携帯モード] [URL送信]

悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「たった一冊読むだけでマッサージなんて

 必要ないから」


 牽制の意味でキッと睨んで加我の方へ体

を逃がすが、クロードは相変わらず余裕の

笑みを浮かべたままだ。

 加我と高瀬はそんな風景にはすっかり慣

れてしまったのか特に何も言わない。

 本当に慣れって恐ろしいと思う。


「参考までに聞きたいんだけど、加我と高

 瀬は読書感想文の本は何を選んだ?」

「“吾輩は猫である”。

 まだ読みかけだけど、なかなか面白いと

 思う」


 名前はまだない、と続く有名なあの本ら

しい。

 俺も読んだことはないから詳しくは知ら

ないけど、加我を見てると読書感想文とい

うきっかけでそういう本に手を出してみる

のもいいかもしれない。


「俺はThe Old Man and The Sea…“老人

 と海”って言った方が分り易いかな。

 トレーニングを兼ねて以前から原文で読

 み進めてたから、ちょうどいいだろうっ

 て思って」

「げ、原文…」


 爽やかな笑顔でサラリと言われてしまっ

たけど、名作と言えどまさか原文で読んで

感想文を書いてくる生徒なんて先生だって

驚くんじゃないだろうか。

 9月下旬に全国高校生英語スピーチコン

テストの地区予選があるって言ってたけ

ど、それに参加する高瀬はやっぱりすごい

んだなぁと思ってしまった。

 なんでそんなことを知ってるかって言う

と俺も打診されたことがあるからだ。

 母さんが日本に居住してからの年数が募

集要項に満たなかったおかげで俺の出場は

なくなったけど、もし兄貴が出場できたな

ら兄貴は代表に選ばれたんじゃないかと思

う。


「俺は日本の経済成長と顧客ニーズについ

 てのビジネス展望ちゅう本やったかな」


 聞いてないのに勝手に答えてくれたクロ

ードに返事をすると調子にのりそうででき

なかったけど、なんでそんな小難しそうな

本を読んでるんだろうという疑問は顔に出

たらしい。


「駆がどーしてもイングランドにこおへん

 って言うんやったら、俺がこっちにおら

 なしゃーないやろ?

 まぁいずれは連れて帰るけどな」


 クロードの返事は色々と突っ込みどころ

が満載で頭が痛くなる。

 でもイギリスは母さんの母国でもあるわ

けだし、自分たちの出生をちゃんと知らさ

れた今なら一度くらいイギリスに行ってみ

たいなと思う気持ちがあるのは確かで。

 その時に1人でも多くイギリスに慣れて

る友人がいれば心強いかなとはチラッと思

ってしまった。





[*前][次#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!