悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*
「兄貴、もういいから。
兄貴のが欲しい」
「まだですよ。
こんなにキツいのに入れたら切れてしま
います」
傷がつくとか腰が立たなくなるとかまっ
たく無視で、憤りや苛立ちのままに揺さぶ
られたこともあったというのに、なんで今
夜に限ってこんなに慎重なのか。
そりゃ、あとあと辛い思いをして恨んだ
りもしたけどさ…。
それでももどかしい。
一分一秒でも早く繋がりたいのに、まる
で意地悪で焦らされているような気がして
くる。
「嫌だって言っても、いつも好き勝手する
くせに…」
ついつい恨みがましく言ってしまったの
は、恨んでいるからというよりそれだけ焦
らされることが辛いからだ。
「だから好き勝手しているじゃないですか」
それなのに兄貴はそんなのどこ吹く風と
いう顔だ。
俺の言いたいことなんて分っていて、そ
れでも俺の言い分なんて聞いてくれない。
負担をかけまいとしてくれるのに不満を
言うのはおかしいのかもしれないけど、負
担を強いられてもいいから少しでも早く兄
貴の熱でいっぱいにしてほしい。
「意地悪っ。もう欲し、ぅああっ…！」
涼しい表情の兄貴に悪態をつくと、ゆっ
くりと引き抜かれていた指先で一気に奥ま
で穿たれた。
凝りを狙ったように擦り上げられてたま
らず縁で自分の指ごと兄貴の指先の根元を
ギチギチと締めてしまう。
言いかけの言葉を俺自身の声で遮られ、
俺の体を高ぶらせるのは俺自身より手馴れ
ていると暗に示された。
「そんなに僕が欲しいならもっと力を抜き
なさい。
こんなに狭いまま僕のモノを咥えこめる
はずがないでしょう？」
「抜いてる、けどっ…」
毎日のように穿たれていた時より回数が
減って解すのに時間がかかってしまうのは
仕方がないし、気持ちばかりが急いてうま
く力を抜ききれない。
自分の体なのに持て余して、やりきれな
い吐息を吐き出す。
「やれやれ、仕方ありませんね…」
「んっ、……？」
ズルリ、と体内から兄貴の指の圧迫感が
消える。
まだ解しきれてないけれど諦めてくれた
のかとうっすら目を開けたら、カサカサと
ビニールの音がした。
兄貴の手に握られているのは、俺がさっ
き渡したチョコの一つ。
なんでこんなタイミングで、と不思議に
思う俺の目の前でそれに唾液を垂らすと、
抜かれた兄貴の指の分だけ綻んでいる蕾に
それを押し当てた。
「あっ、嘘…ッ！？」
信じたくないけど、言い訳の出来ないチ
ョコレートの感触を蕾で感じる。
兄貴は本気でそれを俺の体内に押し込も
うとしているんだとまざまざ思い知らされ
て、驚きと異物感に対する緊張で縁がキュ
ッとすぼまった。
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