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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「どうしました?言わないんですか?」

「言う、けどっ…」


 さわさわと肌を撫でる兄貴の掌にいちい

ち体が反応してしまって落ち着かない。

 下半身の熱は解放されないまま燻り、触

れてほしそうに揺れるだけだ。

 触るならちゃんと触ってほしい…そう思

いながらも、快楽に流されて結局聞けずじ

まいは嫌だと思い直す。


 だけど、やっぱ自分から言うのは恥ずか

しいっ。


 一度は伝えたことがあるとはいえ、あれ

は旅行先でその場の雰囲気とか勢いとかが

あってのこと。

 同じことがいつでもすんなりできるかと

言われると、ちょっと弱い。


 兄貴からも言ってくれたらハードルは下

がるのかもしれないけど…。


 しかしその兄貴の言葉を聞きたいから言

うのであって、本末転倒だ。

 つまり俺が言わなきゃ何も進まない。

 下半身に熱が籠っていても、残っている

理性を弱火で炙られる様な心地で声を絞り

出す。


「すっ…」

「“す”?」


 言ってしまえばたった一言。

 でも二文字目の文字はつかえた喉から出

てこない。

 不自然な間をあけてようやく出てきた声

は絞り出したような声になってしまった。


「き…」

「駆はいつから一文字ずつしか話せなくな

 ったんですか?」


 うぅっ。わかってるよっ!


 ものすごくバカにした目で見られてぐう

の音もでないけど、恥ずかしいだけで好き

じゃないわけない。

 体が火照るのがもう羞恥か快楽かはわか

らないけど、自分から言わなければ兄貴が

言わないって言うなら言う以外の選択肢は

ない。


「すきっ…だから、兄貴のこと。

 弟としてじゃなく。

 だから兄貴の気持ちをちゃんと聞かせて

 くれ」


 最初の一言は緊張のせいか変な感じに上

擦ってしまったけど、兄貴の目を見据えて

言った言葉に一つも嘘はない。

 ちゃんと言いきったという達成感みたい

なものと同時に今度は兄貴の番だという焦

燥感にも似た期待が鼓動を急き立ててい

く。

 どこまでもストレートな兄貴の口から一

体どんな言葉が飛び出すのか。

 一抹の期待とそれを容易く呑みこむ不安

の波に胸をざわめいた。





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あきゅろす。
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