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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「嫌…だったの?

 僕が兄さんの夢に入るの、どうしても

 嫌…?」


 今にも泣き出すんじゃないかと思えるよ

うな悲しげな声を出す麗の手が布団越しに

触れる。

 昔はよく泣いていたけど思春期を迎えて

から麗が泣くのは久しぶりで、泣きそうな

声というだけで心臓に何かが突き刺さった

ような罪悪感が生まれる。


「嫌…じゃなくて。

 そうじゃなくて…」


 だから伝えたかった。

 別に麗が嫌なんじゃない。

 麗が入ってくるのが嫌なんじゃない、と。


「うん…?嫌じゃないの?

 本当に嫌じゃない?」


 それでもまだ信じられないように繰り返

す麗の声は不安げで、俺を居たたまれなく

させる。

 だからそれを払しょくするためにも、俺

はちゃんと伝えなければならなかった。


「は、恥ずかしいから。

 いつでも麗に見せて困らないような夢を

 見てるんじゃない…だろうし」

「うん…?

 兄さんが見てる夢はそんなのないよ?」


 うん?

 ひょっとして、見られてない、のか…?

 とても口にはできないような夢を…見る

ことがあるんだけど。


 ゴソゴソと頭から被っていた掛布団から

頭を出すと、すごく近い距離に麗の顔があ

った。

 まだどこか幼さを残しながらも青年と言

っておかしくない年齢に達している麗の顔

はお人形さんのような愛らしい顔からモデ

ルでもできそうな綺麗なお兄さんの顔立ち

に変化してきている。

 それでも綺麗な目の色やキメの細かい白

い肌はそのままで、至近距離まで近づくと

弟なのに俺の方がドキドキしてしまう。


「本当に…見てないんだな?

 その…上手くは言えないんだけど…」

「うん?どんな夢?」


 どんな夢か…聞かれるとすごく困るんだ

けど。


 でも伝えなければ伝わらないだろうか

ら、出来るだけ遠まわしな言い方を探し

た。


「その…なんていうか…エッチな夢…?」

「あぁ…。

 だったら恥ずかしがることないよ。

 それは僕だから」


 はッ!??


 一瞬、本気で一瞬、俺の耳がおかしくな

ったのかと思った。

 いや、いっそおかしくなっていて欲しか

った。

 今、麗の口からさらっとすごいことを聞

いてしまったから。





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あきゅろす。
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