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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「疲れが溜まってたりするとその一番最後

 の夢さえ覚えてないこともあるね。

 自分は夢を見ないって言ってる人は、た

 いてい見ていた夢の内容を覚えてないだ

 けなんだ。

 よほど強烈な夢でないと起きて暫くした

 らほとんどの人が忘れてしまうように、

 夢での記憶っていうのは本当に幻みたい

 に儚いんだよ。

 だから兄さんが覚えてなくてもしょうが

 ないかなって思ってる」


 俺が覚えてないだけ?

 本当に麗が昨日の夜に俺の夢に入ってき

て今日の予定を確認したんだとしたら…麗

の行動も辻褄が合う。

 まぁ俺がそれを忘れてるんだし、今日急

に別の用事が入ったとしたらそれまでだっ

たんだけど。


「えっと…じゃあ麗はずっごく小さな時か

 らその…夢渡り?をしてきたっていうん

 だな?

 いつも誰かしらの夢の中に入り込んでる

 ってことなのか…?」

「うん。そうだよ」


 麗はまるで呼吸でもするように、あっさ

りと頷いた。

 なんだか凄いことを肯定されたような気

がするんだけど気のせいなんだろうか。


「じゃ、じゃあ…俺の夢に入り込んだこと

 あるのか?

 その、昨日以外にも…?」

「……なんて答えてほしい?」


 やたらと心臓が煩い。

 今にも嫌な汗が浮かびそうな俺をじっと

見て、麗はその様子を伺うように尋ねてく

る。

 もはやそれだけでも充分すぎるほど充分

な答えのような気がしたけど、それを確か

めないまま悶々とするのは精神衛生上とて

もよろしくないことのような気がする。


 面と向かって事細かく訊く度胸なんか、

ない。

 何回かだけど、麗の夢を見て…麗とエッ

チする夢を見て夢精したことがあるんだけ

ど、それも見てたのかなんて…。


「……正直に頼む」


 喉の奥からようやく声を絞り出す。

 斬首台の上に首を差し出したような心地

だ。

 耳の奥で心臓が暴れて、いっそ早く刃を

首に落としてくれないかと自暴自棄に逃避

する。


「毎日」


 静かに響いた声に、心臓が口から飛び出

すかと思った。

 “あ”とも“う”とも声にならない声で

口をパクパクさせ、ついに麗の顔をまとも

に見れなくなってベッドに逃げ込むことに

した。


 だ、ダメだッ!

 今、麗の顔をまともに見れない!!

 っていうか、もし麗の言うことが本当な

ら、このまま寝たって夢でまた…!?


「兄さん?どうしたの…?」


 不思議そうな声が降ってくる。

 ゴソゴソと麗が布団に入ってくる気配が

するけど、顔を出すほどの勇気は俺にはな

かった。





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