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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 カイルがあんまりに頑だったから、距離

を詰め過ぎてしまった。

 気づけば半ば馬乗りに近い態勢になって

いて、先程の温泉でのやりとりを考えると

クロードからしてみたら決して気持ちのい

いものじゃないだろう。


「…どけ」


 自己嫌悪が沸き出しかけたところで俺を

押し退けるような形でカイルがソファから

身を起こした。

 カイルはクロードの前に片膝をついて右

手を胸にあて頭を垂れる。


「申し訳ありません、クロード様。

 出過ぎた真似を致しました。

 どのような処罰も受ける覚悟はございま

 す」


 カイルの口から出たのは思いもかけない

言葉で、穏やかでない物言いに先ほどのク

ロードの視線を思い出した。


「ち、違う!俺が、俺が無理矢理…っ。

 カイルは何も悪くないだろ!?

 なんで謝るんだよ!?」


 違うんだとクロードがカイルを見下ろす

目はやはり冷たい。

 カイルもカイルで、俺が肩を揺すって同

意を促しても一言も発しない。


 本当に二人の間には主従関係しかなく

て、情とか容赦とかいうものは一切介在で

きないのだと思い知らされて背筋が冷たく

なった。


「処断は追ってする。下がれ」

「Yes,my lord」


 それ以上口を挟む余地もないくらい簡潔

なやりとりを終えるとカイルは一度もこち

らを見ずに部屋を出ていく。


 こんなの、あんまりだ!

 ただふざけてただけで、カイルは本当に

何も悪くないのに…!





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あきゅろす。
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