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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*



「はい、あーんして」


 構えの姿勢になっているカイルにニッコ

リ笑いかけて距離を詰め、ガムをその口元

に差し出す。


「食べてくれればいいのに。

 なんで食べてくれないんだよ?」

「そんなの決まっている!

 クロード様が戻られたらどうするつもり

 だ!?」


 ダメなんだろうか…。

 いや、ガムくらいで目くじら立てるよう

なら今までの事を含めてもう少し態度を改

めろと言えばいいんじゃないか?


「俺がカイルに無理に食わせたって言うか

 ら。な?」


 カイルが体を引くだけ距離を詰めていく

と、もともとカイルが端の方に座っていた

せいもあって後が無くなる。

 ガムをその口元に近づけると顔を退けよ

うとするので、当然俺は上から…。


 ビクッ!!


 しかし不自然なタイミングでカイルの体

があからさまに震えたと思ったら表情どこ

ろか体ごと凍りついた。

 その目が俺の向こうを食い入るように見

ている。


「うん…?」


 まるで恐ろしいものでも見たような表情

で凍りついているカイルにつられてそちら

を振り返って理解する。

 なんとも形容し難い鋭い視線で射抜くよ

うにしてクロードが立っていた。

 まったく気配を感じていなかったから驚

いたけど、さすがにそんな目をしているク

ロードは鬼気迫るものがありゴクリと唾を

呑み込むのにも苦労する。

 こんな視線に直視されているカイルは生

きた心地がしないかもしれない。


「えっと…クロードもガム食べる?」


 どちらも動かず一言も発しない状況に耐

えかねて、マヌケだとは思いながらも状況

の打開を試みてクロードにガムを差し出し

てみる。

 クロードは視線だけ動かして俺の手の中

にある板状のガムを見て、ひどく傷ついた

ような目で俺を見た。

 その瞬間罪悪感に近いものがじわじわと

湧き上がってきた。

 後ろめたい事は一つもしてないはずなの

に、だ。

 それでもクロードの視線は訴えかけてく

るものがあって、胸が締め付けられる。





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