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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「…キスはダメだってば」


 そこそこ広い浴槽だというのにクロード

は迷わずこっちに来てさっそく顔を近づけ

てくる。

 なんの為に先に上がろうとしたのか分か

っていないんだろう。


「舌は入れへんから。な?」


 俺の肩を抱きしめようとするクロードの

肩を押して顔を反らすが、それでも肩を掴

むクロードの力が強い。


「…のぼせるの嫌だからな、俺」


 一応言い置いてから顔を上げてクロード

の肩を押していた手から力を抜く。

 クロードは引き寄せられるようにして唇

を触れ合わせてくる。

 舌こそ入れてこなかったものの、たっぷ

りと時間をかけて俺の吐息ごと唇を繰り返

し吸ってくる。

 それに応えながら自然と脚を抱えていた

腕を解いてクロードの背中の方へと回す。

 ここでその気になられるのは困るけど…

だからってキスが嫌いな訳じゃない。


「なぁ、俺のこと好き?」


 どちらの物かもわからない唾液でしっと

り唇が濡れる頃、ようやくクロードは少し

だけ顔を離した。

 それでも鼻先が触れそうな距離で尋ねて

くる。


「うん…」

「“うん”やなくって、ちゃんと“好き”

 って言うて?」

「そ…それは恥ずかしいから」


 頬を撫でるクロードの指先がくすぐった

い。

 口から飛び出しそうなほど心臓が煩いの

は何も温泉のせいだけじゃないだろう。

 好きって言って…クロードはそう言うけ

ど、今までそれが成功したのはクロードの

熱を体の奥に感じて理性が溶けるほど気持

ち良かった瞬間だけで。

 まだ素面では緊張と羞恥が先立って上手

く声になってくれない。


「なんで恥ずかしいん?

 駆は俺のこと好きやないん?」

「そうじゃないけど…」


 毎日のように好きとか可愛いとか言うク

ロードにはもどかしく思うのかもしれない

けど、いざ面と向かって言ってと言われて

も心の中で思っていることがすんなりと口

から出てきてくれない。

 そういうのは文化の違いと言うか…お国

柄なんだと思う。





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あきゅろす。
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