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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


「じゃあ…」


 涙は零れそうなのに、ひきつる喉は干上

がるようで言葉が上手く出てこない。


「誰でもよくないって言ったら…?」

「言うだけなら容易い」


 俺が絞り出す言葉を兄貴は声色ひとつ変

えずにバッサリ斬り捨てる。

 一度ギュッと拳を握りしめて、汗ばむ掌

を開いて、次の言葉をなんとか喉元まで引

き出してくる。


「じゃあ…じゃあ兄貴だけだって言った

 ら、兄貴も言ってくれんの?」


 ちゃんと…触れてくれる?


 悪戯とかただの性欲処理だとか言わない

で、ちゃんと好きって言って抱いてくれる

のか。


「僕がそうだと言わないと言えないような

 ら」

「兄貴はズルイだろっ」


 また切り捨てられようとする気配に、先

手を打った。

 そのまま何か言う暇を与えずにまくした

てる。


「兄貴があんなことっ…しなきゃ、俺は普

 通でいられたのに!

 こんな気持ち知らずに、ただの弟でいら

 れたのにッ!」


 堪えていた大粒が震える頬を伝った。

 俺がこの気持ちの答えを出すまで、「実

の兄弟だから」とか「両親が悲しむから」

とかどれだけ悩み苦しんだのか、巻き込ん

だ当の本人は分ってない。

 それなのに頭から全部否定する権利なん

て兄貴にはないはずだ。





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