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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


 でも兄貴の腕はちっとも緩まなくて、そ

の肌を吐息を意識するだけで鼓動が耳の奥

でうるさく鳴り響く。


 こ、こんなの温泉に入ってるからだっ。

 兄貴が腕を解いてくれれば、さっさと出

るのにっ。


「…どんどん匂いが強くなるんですけど。

 どういうことです?」

「う、うるさいっ。

 温泉のせいだろっ。もう離せよ!」

「じゃあ残念ですけどもうこちらには来れ

 ませんね。

 客室についているほうの露天風呂で我慢

 してもらいましょうか」

「ぁっ、やだって…っ!」


 もっともらしいことを言いながら指先が

胸の突起を弄り焦ったせいで声が上擦る。


 ガラッ


 しかしそれ以上俺が何か言う前に、屋内

からこちら側に通じるドアが開いた。

 一瞬心臓がすくみ上るほど驚いたが、中

から白髪の老人が出てくると兄貴の腕の力

が緩む。

 その隙をついて今度こそ立ち上がって石

風呂を出ると、逃げるようにして脱衣所ま

で小走りで向かった。


 だ、誰か知らないけど、助かった…。


 火照った体には脱衣所の空気がちょうど

いい。

 俺はちらほら人が見え始めた脱衣所で手

早く浴衣に着替えると、渡されていたルー

ムキーを持って部屋まで逃げ帰った。







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あきゅろす。
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