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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


『秀も春から1人暮らしだし、色々と考え

 てることがあるんでしょう。

 兄弟水入らずで温泉に浸かって、ゆっく

 りしてらっしゃい。

 大学に入ったらバイトするつもりだって

 言ってるから、引っ越してしまったら秀

 はしばらく帰ってこないだろうし』

「うん…」


 もう正月も過ぎてしまったし、3月1日

には高校の卒業式だ。

 春先の引っ越しは混みあうらしく、引っ

越し予定日は早めに設定されている。

 まだ先だと思っていたけれど、その日は

もうすぐそこまで迫ってきている。

 通話が終了すると二つに折り畳んでポケ

ットに滑り込ませた。


「母さんはなんて?」

「ゆっくり温泉楽しんできてって言って

 た。兄貴によろしくって」

「そうですか」


 兄貴の向かいに置かれている座椅子に腰

を落ち着けると川のせせらぎが耳に入って

くる。

 窓の外では音もなく雪がちらつき始めて

いた。


「せ、せっかく来たんだし温泉入ろっと。

 …兄貴は?」


 まだ夕食には時間があるし、まずは汗を

流して体を温めたい。

 立ち上がりながら尋ねたら兄貴は一瞬思

案するように沈黙してから立ち上がった。


「じゃあ湯処に行ってみましょうか。

 部屋の露天風呂とは泉質が違うという話

 でしたから」





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あきゅろす。
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