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悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*


『はい、もしもし?』


 かけたのは母さんの携帯電話で、数回の

コールですぐに電話は繋がった。


「もしもし、母さん?

 今、旅館に着いたから。

 なんか…すごい旅館なんだけど。

 部屋に露天風呂ついてるとこなんて初め

 てだし」

『そう、良かった。無事に着いたのね。

 秀が吟味して選んだみたいだから、きっ

 といい所なんでしょう。

 楽しんでらっしゃい』

「えっ?吟味?」


 この旅行は両親から贈られたものじゃな

かったのか。

 それとも何処でもいいと言われて選んだ

んだろうか。


『あら?聞いてないの?

 秀が言ったのよ。

 クリスマスもお正月もいらないから駆と

 二人で旅行に行きたいって』

「聞いてない、そんなこと…」


 チラリと横目で兄貴を盗み見ると、兄貴

の方はじっとこちらを見ていたようでバッ

チリ視線が合ってしまう。

 慌てて目をそらしてしまったのは反射的

な行動だった。

 でも母さんの話が本当なら、兄貴が言っ

ていたのとは180度違う。


『秀は相変わらず不器用ねぇ。

 駆の気を引きたくていつも意地悪ばかり

 するし』


 電話の向こうで母さんがクスクスと笑い

声をたてる。

 「あはは」と同意の苦笑いで返すが、ど

うも背中に兄貴の視線が突き刺さってくる

ようで落ち着かない。

 聞こえるはずのない会話を聞かれている

ような、そんな棘のある視線が背中に突き

刺さる。





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あきゅろす。
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