悪魔も喘ぐ夜
*
「それじゃ行ってきます。
帰ってきたら、1年生の時の僕のノート
を見せてあげますよ。
安心してゆっくり眠りなさい」
何も安心じゃないが、不用意に兄貴の機
嫌を逆撫でしそうだから黙って頷いた。
「見送りのキスは?」
そんなもの今までしたことない。
いつまでも顔を近づけたまま体を起こさ
なかったのはそのためだったのか。
仕方なしに悲鳴を上げる体に鞭打って体
を起こそうとする。
うまく腕に力が入らず、バランスを崩し
かけたところで抱き止められた。
「…仕方ないですね。
明日からはちゃんと駆からするんです
よ?」
何度目かもわからない唇へのキス。
舌が入ってこないだけマシ…なんて思え
る位には兄貴に好き勝手されてしまった。
でもそれを明日から俺にしろって…。
それが何を意味するのか。
「…わかりましたね?」
兄貴が下唇を吸いながら離したから、濡
れた音が鼓膜を震わせた。
その目を見て、そのキスの意味を悟って
しまった。
だから俺はそのキスを………。
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