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悪魔も喘ぐ夜
*


「髪が濡れていますよ。

 どうしたんですか?」


「あー、これはちょっと…。

 ジュースこぼしちゃって。

 それで一度家に帰って着替えてきたん

 だ」


 本当の事なんて口が裂けても言えない。

 母さんにも悟られたくなくて、近所のネ

ットカフェでシャワーを浴びてから帰った

くらいだ。

 服も着替えたし、あとはジュースでとい

うのをつき通せばいい。


「へぇ…?」

「兄貴こそ診察どうだったんだよ?」


 兄貴はまだ疑っていたようだけど、それ

よりも俺が知りたかった話題にすり替え

た。


「別に大したことはありませんでしたよ。

 打ち身にはなっていますが湿布を貼って

 安静にしていればじきに治ると言われま

 したから」

「そっか。よかった…」


 とりあえずほっと胸を撫で下ろす。

 骨や内臓に損傷を受けるような最悪な事

態にはなっていなかったようだ。


「それで、何を買ってきたんですか?」

「え?あ、えーと…」


 先ほど慌てて買いに走ったコンビニの袋

を開く。

 サンドイッチとおにぎりとおかゆと…。

 痛みで朝食もまともに食べられなかった

みたいだから、せめてお昼くらいはと手当

たり次第入れてきた。

 あとはこの中から選んでもらって、残っ

た分は俺が食べればいいと思って買ってき

た。


「また沢山買い込みましたね」

「兄貴が食べなかったら俺が食べるからい

 いよ」


 呆れる兄貴が手に取ったのはスポーツ飲

料と小腹が空いた時の為にと一応入れてお

いた栄養補助食品だった。

 まさに3時のおやつという感じの量で、

とてもじゃないけど食事としては足りな

い。


「えっ、それだけ!?」

「必要な栄養がとれれば充分でしょう」


 とても育ちざかりな男子高校生の食事量

ではない。

 まして朝だってほとんど食べていなかっ

たはずだ。


「これとこれも食べろって」


 おにぎりを2つほど兄貴の鞄の中に突っ

込んで押し付けると、兄貴は呆れたように

溜息をついてそれ以上は何も言わなかっ

た。





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