悪魔も喘ぐ夜
*
「ねぇ、お兄ちゃん。旅行いこうよー」
ねぇねぇと続ける麗に、言いにくかった
が口を開いた。
「俺もやめとこうかな。
麗は父さんと母さんと一緒に旅行楽しん
でこいよ」
「えーっ?!」
麗は不満たっぷりだ。
その理由を何となく察したのだろうか。
だとしたら、末恐ろしすぎる。
「あら、駆も何か用事があるの?」
「いや、そういうんじゃないけど…。
この家に1人ってやっぱり寂しいと思う
し」
「余計なお世話です」
言い終わらないうちに兄貴の声がかぶさ
った。
本人はしれっとした顔で悪いとも思って
いないようだ。
「お兄ちゃんが行かないならぼくも行かな
いっ」
ぎゅうううっ
麗の腕にしがみつく力が目に見えて強く
なる。
「麗は遊びたい盛りでしょう。
勉強の邪魔ですから、4人で旅行にいっ
てきてください」
兄貴の口の悪さは本日も絶好調のよう
だ。
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