悪魔も喘ぐ夜
*
目覚めると麗が俺の顔を覗き込んでいた。
「麗…?おはよ…」
「おはよう、お兄ちゃん」
ぎゅううっ
朝一番のハグ。
顔中にキスの雨が降るのも追加されたの
はいつからだったか…。
擽ったいキスを我慢していたけれど、そ
のキスが唇に落ちそうになってとっさに指
を麗の唇にあてて阻止した。
あんな夢の後では、軽々しく受け入れる
気分になれない。
「お兄ちゃん…ぼくのこと嫌い?」
悲しそうな両目が傷ついたように見上げ
てくる。
その視線には弱くて、思わず目をそらし
ながら擦れる声で答えた。
「麗のことは好きだけど、そういうんじゃ
なくて…」
もう何十回も繰り返した言葉。
でもそれ以外に言える言葉がなくて何度
も繰り返してしまう。
その言葉で麗を止めることなどできない
と分かっていても。
「じゃあ…絶対に誰にもキスさせない?
兄さんにも、他の誰にも。
そうしたらぼくも我慢するよ?」
そんなことができたら、こんなことには
なっていない。
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