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悪魔も喘ぐ夜
*


「あぁ、こんなに零して…」


 呆れたように俺を見下ろしていたのに、

まだ高ぶったまま先走りで濡れるそれをじ

っと見つめて目を離さない。

 おもむろに体をかがめてきた時は嫌な予

感しかしなかったけれども、ぐったりとし

た体ではそれを避けられなかった。


「あっ、舐めるなっ…!」

「イキたくないんでしょう?

 しっかり締めていなさい」


 敏感になっている高ぶりを兄貴の濡れた

舌が這う。

 今度こそどうなるかわからないと悲鳴を

上げたけれども、兄貴は聞く耳もたずとい

った風に先走りで濡れた高ぶりを味わって

いるようで顔を上げてくれない。


「ぁっ…んっ。

 はぁ…ぁあッ、啜るのナシっ!」


 ただ舐められるだけでも唾液の媚薬効果

が肌から浸透しそうで怖かったけれども、

それ以上に先端を含まれて吸い上げられる

とそれだけで放ってしまいそうになり悲鳴

をあげる。

 しかし兄貴はそんなことおかまいなしで

何度もしつこく啜り上げてくれる。

 俺は痛い位に高ぶりの根元を締めつけな

がら嫌だと首を振って耐えるしかなかった。


「嫌なら一滴も零さなければいいんですよ。

 後からあとから零れてきて止まらないじ

 ゃないですか」

「そんな、出来るわけないっ」


 自分の唾液が俺にどんな効果をもたらす

のか知っているくせに、兄貴は随分と無茶

なことを言う。

 まだとろりと先走りを滲ませる先端を、

兄貴が顔を上げた隙に自分の掌で覆ってし

まうことでようやくその責め苦は終わった。


「じゃあ一人でイッてみてください。

 ここまで助けてあげたらもうイけるでし

 ょう?」

「兄貴の前では絶対にやだッ!」


 涼しい顔で本題に戻そうとする兄貴を睨

みつけて断固として拒否する。

 これだけ好き勝手されて、どうしてそん

なことが出来ると思うのか。

 仮に自慰が成功したとしても、その直後

に兄貴のを押し込まれてしまうんじゃない

かという危険だって十分にある。

 そんなことをされた体をクロードにチェ

ックされたら…隠し通すことのほうが難し

いだろう。


「では指は抜いてあげませんよ。

 それでいいんですね?」

「っ、もう充分だろっ!?

 兄貴はどうしてそんなに俺をいじめたい

 んだよ!?」


 こんなに頑張って耐えているのに、その

努力が何の為かわからないのかと悔しくて

たまらない。


「イッてしまえばいいんですよ。

 約束なんてここまで許しているのなら、

 あってないようなものじゃないですか。

 つまらない脅しになど屈しないと跳ね除

 けてしまえば、あちらはそれ以上強くは

 出られません。

 そもそも家から出たりしなければ、あち

 らが手出しすることは出来ないんですよ」


兄貴の言うことはいちいもっともだし、

きっとそれが一番安全だとは思う。

 思うけど、それは嫌だ。

 出席日数がどうとか、クロードがどうだ

とかというのもあるけれど、それとは違う

理由。

 一度でも安全な場所に逃げ込んでしまっ

たら抜け出せなくなるんじゃないかという

不安。

 家という狭い空間だけが全てになってし

まうんじゃないかという恐怖。

 何より、自分1人だけが世界から切り離

されて置いてきぼりにされてしまうんじゃ

ないかという孤独感。

 それがきっと耐えられないから。





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あきゅろす。
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