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悪魔も喘ぐ夜
*


「イキたかったんでしょう?

 我慢などせずに出してしまえばいいじゃ

 ないですか」


 涼しい顔をする兄貴の指先はどんなに蕾

が締め付けて限界を訴えても止まらない。

 ゾクゾクと背中を駆け上がる快楽に負け

そうになりながらうわ言の様に口走った。


「そしたら、クロードにもそれ、許さなき

 ゃいけなくなるだろっ」


 その一言でようやく兄貴の指先が止まっ

た。

 はぁはぁと肩で息をしながらようやく責

め苦から解放された体は兄貴の指を締めつ

けていた力を緩める。

 体内を掻き回すことで襞に触れ馴染んで

しまった兄貴の唾液の効果は薄れないけれ

ども、直接的な刺激がなくなっただけでだ

いぶ楽だ。


「…なるほど。そういうことですか」


 静かすぎるほど静かな声が響く。

 まだ熱が抜けずに天を向いている高ぶり

や兄貴の指を呑み込みながら窄まる蕾とは

温度の違う声だ。

 怒っているのか、呆れているのか、それ

ともそれ以外なのか。

 それすらわからない。

 兄貴は執拗に責めたてていたその一点か

ら指先を離して体内で二本の指をゆっくり

と拡げた。


「あっ、やめっ…!」

「入れていないのは本当でしょうね。

 あの男のものが僕よりずいぶんと小さく

 なければ、ですけど」


 久しぶりの圧迫感に悲鳴を上げる蕾の様

子を見て兄貴の冷静な声が分析する。

 程なくして閉じられた指先にほっと息を

逃がしていると、襞を擦るようにして指先

がゆっくりと動き出す。


「でも、そうだとしてもあの男の思惑通り

 になってしまっているんですよ。

 解ってますか。

 誰にも触れさせないなんて口先だけで、

 身体チェックと称してこんな紛い事を

 続けていればいずれ」

「解ってるよ…」


 兄貴の静かだけど棘のある声にかぶせて

遮る。

 今日の昼に俺にしたことがクロードの思

惑通りなのだとしたら、兄貴の言いたいこ

ともきっとそういうことだ。

 それに今まで気づかなかったのかと問わ

れるなら、何となくは気づいていた。

 確信できたのは今日のことがあったから

だ。

 クロード自身の気持ちを別にするなら、

クロードがどういう結果を求めて動いてい

るのかはなんとなくだけど気づいていた。

 けれど気づいたところで拒否はできなか

ったし、今日のことで決して打算だけでは

ないんじゃないかという気持ちにもなって

いる。

 それを俺が受け入れるかどうかはまた別

の話だけれども。


「解っていて、それでも耐えきれる自信が

 あるんですか?」

「……」


 自信があるなんて言ったら嘘だろう。

 自慰で発散することも出来ないと分かっ

た今、体の熱を子供だましみたいに宥める

ことしか出来ないのだから。

 誰かの手を借りるなら、それと同じこと

を他の誰かにも許さなければフェアではな

くなってしまう。

 これ以上を誰かに許してしまえば、もう

あとはなし崩しになってしまうだろう。

 けれど体が限界を訴えているのも事実で

どうすればいいのかわからない。





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