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悪魔も喘ぐ夜
*


「べ、勉強の最中だったんだろっ?

 俺のことはいいから部屋に戻れよっ」


 兄貴が俺に貸してくれていたそのファイ

ルは兄貴が高校1年生の時の授業でとった

分のノートだから、それを必要としてると

いうことは勉強している最中だというのは

容易に想像できた。

 しかし早く出ていってほしい俺の思惑に

反して兄貴は怖いくらい明るい笑みを浮か

べている。


「確かに勉強中でしたけど、まさか駆が一

 人でイケずに悶々としているなんて知り

 ませんでしたからね。

 駆が一人でキチンとイクのを見届けてか

 らにします」

「はぁっ!?なんでだよっ」

「もし駆の体が既に淫魔の体液無しでイケ

 ない身体になっているとしたら、僕以外

 の相手にそれを乞うようなことがあって

 も困りますから」


 兄貴の言い分はそんなことあるわけない

だろっと言いたくなるようなものだったけ

れど、有無を言わさぬ空気がその言葉を呑

み込ませた。

 俺だってイケるものならイキたい。

 他人の手でなく自慰であれば皆との約束

を破ったことにもならないだろう。

 だがしかし手前までいってイケなかった

のは事実で、もし兄貴の言うように本当に

淫魔の体液無しではイケない身体になって

しまったのだとしたら自慰だけでイクこと

はもうできないだろう。

 しかしそれを確かめてみるのはまだ怖い。

 まして兄貴の目の前で、なんて。


「や…ヤダ。

 それだけじゃ終わらないだろ、兄貴は」


 もし仮に兄貴が唾液を提供してくれたと

しても、本当に兄貴がそれだけで終わるな

んて到底思えない。

 今までさんざん揺さぶられ、搾り取られ

た体が鼓動を速めているのはきっとそのせ

いだ。


「その先を期待しているのは駆でしょう」

「そ、そんなわけないだろっ!」


 “自分のことを棚上げして俺のせいにす

るな!”と兄貴を睨んで掛布団を体に掛け

る。

 兄貴の手は相変わらず体に触れたままだ

ったけど、これ以上触るなと無言でアピー

ルする。

 まったく、たまに親切っぽい事を言った

と思ったらとんでもない裏があるのだから

鵜呑みにするのは危険だ。


「じゃあどうするんですか、ソレ?

 自力ではイケないのでしょう?」


 既に急所は心得ていると言いたげな声が

降ってきて、俺は押し黙る。

 イケないなら触れずにおいて誤魔化すし

か思いつかない。

 しかし毎日のように精を吸われ続けてい

た時ならいざ知らず、欲求不満に陥った体

でこれに耐えたとしてもいつまでも誤魔化

しきれるものではないとも思う。

 いつ戻ってくるのかもわからない母さん

が戻ってくるまで…と思うと気が重くなる。

 1か月は我慢できたとしても、半年…1

年…もしかしたらそれ以上かかる可能性だ

ってあるのだから。





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