悪魔も喘ぐ夜 * 「…はーい」 どこか納得はしていなさそうだったが、 それでも空気を読んでくれる弟だ。 スポンジを受け取り、泡を洗い流した麗 は湯を張った浴槽に体を沈める。 痕跡のある場所はさりげなく手早くスポ ンジで洗ってしまい、ようやく安心する。 「ねぇ、お兄ちゃん」 「うん?」 「今夜お兄ちゃんと一緒に寝てもいい?」 「え?またどうして?」 俺の高校進学を機に俺と麗の共同部屋は ちょうど真ん中で区切られ、元は一つの部 屋であったものが今では独立した二部屋に なっている。 いずれは兄弟それぞれに個室が欲しいだ ろうと、建てる時に両親が設計士に依頼し たらしい。 麗自身もつい先日、自分の部屋が手に入 って大喜びしていたはずなのだが…。 [*前][次#] |