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悪魔も喘ぐ夜
*


「でも…でもさ、クロードだって悪気があ

 ったら将来の心配までしてくれなかった

 だろうし」

「悪意がないのに脅せる人間がいると、そ

 う言いたいんですか?」

「っ……」


 いや、まぁそうだけど…。


 いちいち兄貴の言うことは尤もで、でも

だったらどうやって兄貴を説得すればいい

のかわからなくなる


「この際だからハッキリ言っておきます。

 あの男の口車にのっている間は、僕や麗

 の為に何のプラスにもなりません。

 あの男にとって重要なのはたった一つ。

 駆を自分の意のままに操ることです。

 その為には僕や麗でも駒として利用しま

 すし、駆の意志すらどうでもいい。

 脅して退路を塞ぎ、餌を撒くことで悪意

 はないんだという顔をしているんでしょ

 うが、そんなのは全部茶番です」


 兄貴の目がじっと俺を見据えながらクロ

ードを批判する。

 どうしてわからないんだという苛立ちす

ら消えていて、その言葉を俺の胸の奥に打

ち付けたいように。


「でもどんなに守ろうと思っても、駆がそ

 れを聞いてあの男の思うとおりに動いて

 しまったら何にもなりません。

 危機意識を持ちなさい、駆。

 あの男はクラスメイトの顔をしているか

 もしれない、遠く血を遡れば同じ祖先に

 行きつくかもしれない。

 それでも他人です。

 自分の思うとおりに物事を進めたいだけ

 の他人、なんですよ。

 もし本当に駆の意志を尊重するなら脅す

 必要などなかった。

 あの男は駆がフェロメニアでなければ顔

 すら合わせることはなかったかもしれな

 い。

 そもそもあの男が近づいてきた理由を忘

 れたんですか。

 駆のフェロメニアとしての利用価値を見

 極める為、ですよ?」

「い、いや、そんな利用価値とか…」


 兄貴に言われてクロードが玄関先で言っ

ていた言葉を思い出す。

 クロードが言っていたのは俺が本当にフ

ェロメニアなのかどうか。

 そしてフェロメニアならどこまでその能

力があるのか、じゃなかっただろうか。

 利用価値なんて…まるで物みたいだ。


「同じですよ。

 そもそもフェロメニアかどうかなんてあ

 の男には嫌と言うほど解っているでしょ

 う。

 その調査とやらも、あれだけの時間があ

 ってまだ終わらないのは何故ですか。

 そもそも脅してまで手の内にいれたいと

 画策しているのは?

 駆を…いえ、フェロメニアを手に入れて

 有効活用したからでしょう」


 兄貴の言葉が耳に痛い。

 俺を俺としてじゃなく、ただフェロメニ

アの体質を持つ器としてしか扱っていない

のだと突きつけられるようで。

 信じたくない。

 そんな言葉は信じたくないけど、確かに

反論できるだけの確証のある言葉が俺の中

にはない。

 何も言えずにいる俺に兄貴はさらに言葉

を重ねてきた。


「さっさと捕えてしまわないのが疑問でし

 たが、これでようやくハッキリしました

 ね。

 駆に自らの意志で選ばせたのだと錯覚さ

 せる為、そして仮に逃げ出すことがあっ

 たとしても真っ先に無条件で受け入れる

 先を潰す為だったんでしょう」

「潰すなんて、そんなっ…」


 そこまで酷いことは…と言いかけたけど

兄貴の目はどこまでも冷え切っていた。





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