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悪魔も喘ぐ夜
*


「あ、うん…。そうだよな、ゴメン。

 俺も冷たい牛乳は腹壊すから苦手だし」


 カイルの勢いに気圧されて思わずあまり

関係のない話を持ち出すが、カイルはまだ

目の奥で唸っているようだ。


「でもさ、精気吸えなかったら食事どうし

 てんの?

 淫魔って精気以外で栄養補給できるの?」


 さらに地雷を踏み抜くような気がしなく

もなかったが、この状況で他の話題を持ち

出しても答えてもらえるかわからないから

おそるおそる口にしてみた。

 まぁ好奇心がなかったとは言わないけれ

ども。


「…サプリメント」


 カイルはものすごく嫌そうな顔をしなが

らも答えてくれた。

 なるほど。

 どうやら食べられないことで足りなくな

る栄養素をサプリメントで補うというのは

人間と変わらないようだ。

 食事の全てをそれに頼るというならもっ

としっかりしたものかもしれないけれども。


「へぇ…じゃあ俺もそのサプリメントを食

 べたら栄養補給できるのかな。

 一応母さんの血を継いでるし」


 さすがに誰かのそれを飲んでみる…なん

てことはできないけれど、サプリメントを

試せる機会があるなら試してみたいと思う

くらいには興味をひかれた。

 子供の時から本当に母さんの血を継いで

いるのかと周囲にも自分でも思い続けてい

たから、その反動もあるのかもしれない。


「さぁ、知らん。

 どうしても試したいのなら直接クロード

 様に申し出てみるんだな」

「え?なんでクロード?」


 思いがけない名前がカイルの口から出て

きて思わず何も考えずに尋ねたら睨まれた。


「お前は馬鹿なんだな。

 そもそもイギリスの通貨も持っていない

 くせにどうやって手に入れるつもりなん

 だ。

 それをおいてもクロード様に話を通さな

 いなんて有り得ないが。

 C&M社は医薬品メーカーの大手だと言

 っただろう。

 中でもサプリメントなどの補助食品、媚

 薬やローションなどの日用品の市場はC

 &M社が常にランキングトップだ。

 半魔といえどクラウディウス家と縁のあ

 る者なら、せめてその程度の常識くらい

 その足りない頭に叩き込んでおけ」


 …なんだか最後のほうでやたらと馬鹿に

されたような気がするけど、さっき八つ当

たりしてしまったばっかりだから聞き流そ

う。うん。


「母さんが淫魔だって知ったのすらつい最

 近なのに無茶言うなよ。

 そりゃカイルはクロードと付き合い長い

 のかもしれないけどさー」

「長くなどない。

 クロード様にお仕えするようになってま

 だ3か月も経っていない」

「えっ?」


 カイルは常にクロードの影で動いている。

 カイルの言動の全てはクロードの意志や

都合を反映していると言っても過言ではな

いだろう。

 こんな風にまともに口をきいてくれたの

も、更には自分のことを話してくれたのも

これが初めてなくらいだ。

 クロードが何か言わなくても察して動い

ているように見えたからずっと仕えている

んだと思ったのに違ったらしい。





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