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悪魔も喘ぐ夜
*



「うーん…クロードの父さんが経営してる

 ってことは、クロードが将来継ぐってい

 うこと?」

「さぁ…それはどうかわからんが。

 ただ他のご兄弟は日本に興味がない方ば

 かりだからな。

 クロード様にその気持ちがあって、マル

 ク様がそう判断なさったら日本支部はク

 ロード様が担当される可能性はあるだろ

 う」


 なるほど。

 じゃあもし仮にそういうことになったら、

クロードが常に日本にいる状況になるって

いうことだろう。

 それが良い事なのかそうでないのかはま

だ分からないけれども。


「でもさ、きっとクロードのことだから経

 営とか難しい仕事もさっさと片付けちゃ

 うんだろうな。

 任されるにしてもまだ先の話だろうけど」


 羨ましい、と思う。

 生まれ持った才能とか積み上げた努力と

かで未来を選べる人たちが。

 今まで将来の為にと勉強をしてきたけれ

ど、厄介な体質のせいでまともな日常生活

すら送れなくなるかもしれないっていう状

況の俺とは雲泥の差だ。

 そういう人達と自分とを比べた時に、能

力や努力ではもうどうやっても越えられな

い壁がそびえていて泣きたくなる。

 だからつい、本音がぽろっと漏れた。


「フェロメニアになんて…生まれてこなけ

 ればよかったのに」


 生まれてこなければよかったなんて思わ

ない。

 父さんや母さんを恨んだことも一度もな

い。

 だけど叶うなら、普通の…本当に普通の

半魔に生まれてきたかった。

 兄貴や麗みたいに。

 決して贅沢な悩みではないはずなのに、

どうしてそんな些細な願いさえ叶わないん

だろう。

 どんどん後ろ向きになる思考回路を振り

払うようにして顔を上げると、カイルの静

かな眼差しにぶつかった。

 なんだかんだで嫌悪感や侮蔑を含まない

目でカイルに見られたのはこれが初めてだ

と思う。

 しかしそれが何故なのかわからなくて小

首を傾げるとカイルは興味を失ったように

あっさりと視線をそらしてしまった。


「…コンプレックスが思わぬところで役に

 立つこともある」


 いつでもクールな態度のカイルにしては

やけに小さな声だったから聞き逃すところ

だった。


「えーっと、それってどういう意味…?」

「そのままの意味だ。

 欠点だと思っていても、それを必要とす

 る状況になれば有利に働くこともある」


 カイルの言うことは抽象的だが、どうや

らカイルなりに気を遣ってくれているらし

いことは知れた。

 カイルって必要最低限しか喋らないから

とっつきにくい印象があったけれど、実は

いい奴なんじゃないか…?

 そう思ったら体は自然とカイルの方へ向

き直っていた。





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