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悪魔も喘ぐ夜
*


 生徒の居なくなった教室を出て、鞄の置

いてある自分達の教室に戻る。

 もう誰もいないだろうと思っていたのに

カイルが一人、机に向かって本を読んでい

た。


「あれ?

 まだ帰らないのか、カイル?」

「ようやく戻ってきたか。

 お前を待っていただけだ」


 てっきりいつも通り無視されると思った

のに返事が返ってきて驚く。

 しかも俺を待っていたなんて何の用事な

んだろう。


「へぇ、珍しいな。

 それで何の用?」

「俺がお前に用などあるものか。

 クロード様からお前を監視するように命

 じられているだけだ」

「あ、あはははは…」


 前科があるだろうと睨まれ、バツが悪く

なって苦笑いで誤魔化す。

 クロードはこのところ授業にもまともに

参加していない。

 何か用事があるようで放課後まで学校に

も来ないこともザラだ。

 そもそも毎日会えないので日課になりつ

つあった身体チェックが出来ない日もちら

ほら出てきている。

 ちょうど昨日も放課後まで来なかったか

ら不可抗力だよな?とカイルに言い訳して

さっさと帰ってしまったんだけど…。

 やっぱりクロードからしたら不満らしい。

 誰にも手出しされない日々がようやく戻

ってきそうで喜んでいたのに…。


「桐生、それじゃ記事の下書きを来週まで

 にってことでいいか?」

「あぁ、そうだな。

 今日はこれで終わりにしようか」


 声をかけられて振り返ると加我はすっか

り帰り支度を整えていた。

 校内新聞の記事に関しては白浜先輩の家

で子猫とのツーショットを撮らせてもらっ

てからでも遅くはないだろう。

 お先に、と声をかけて帰る加我にまた明

日と手を振って見送ると、夕暮れの教室に

残されたのは俺達二人。

 いつもなら気まずい空気に委縮してしま

うかもしれないが、カイルがまともに口を

聞いてくれたということは少しくらいなら

会話もしてくれるかもしれない。

 俺も帰り支度をしてカイルが座っている

席の隣の席に移動する。


「そういえばさ、クロードって何時くらい

 に来るの?」

「解らん」

「カイルも知らないのかー…。

 なんか、ホント最近のクロードってバタ

 バタしてるよな。

 よく学校休んでるし、来ても昼からとか

 夕方とか。

 たまに呼び出されてそのまま早退しちゃ

 うし…」


 夕刻を示す掛け時計に目を向けながら、

今日は一体何時になるのかとため息をつく。

 あまり遅いと兄貴や麗が言い顔をしない

から避けたいんだけど…。


「お前はニュースも見ないのか」

「え?」


 呆れたような声が突き刺さってきて何事

かとカイルを見ると軽蔑の混じる目で見ら

れていた。

 なんでだろう。

 身に覚えがないんだけど。





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