[携帯モード] [URL送信]

悪魔も喘ぐ夜
*


「くぅっ、そんなに締めたら出ちゃうよっ」


 俺の奥深くに猛りを埋めたままだった麗

も声を震わせたけれど、一滴も吐き出せな

いままの強制絶頂に抗う術などもたなかっ

た。


「はぁっ、はぁっ…」


 奥まで入れていたものを半ばまで引き出

した麗が最後までは耐えきれなかったのか

手を止めていた。

 一方でそんな小さな穴まで犯されて感じ

てしまった自分の体がどうしようもないほ

ど浅ましく、身の置き所がない。


「もう、抜いて…。おかしくなる…」


 恥ずかしくて情けなくて、喘いだばかり

の喉から震える声を絞り出す。

 途中までなんて、奥までそれで犯される

よりも辛い。

 途中まで抜いたのなら、いっそ全部引き

抜いて楽にしてほしい。

 もっと言うならこれ以上の快楽を体に覚

えさせないでほしかった。

 もうすでに深い所まで堕ちてきた気でい

たのに、まだ身を投げた深淵は深かったな

んて知りたくない。

 知るのは怖い。


「でもお兄ちゃん、すごく気持ち良かった

 んじゃない?

 ぼくのすごく締め付けてたよ?

 途中で止めなかったらイッちゃうかと思

 った」

「だって、おかしいっ。

 そんな、ところで、感じるのは…っ」


 ましてそれを見られたのが麗だなんて、

こんな悪夢はさっさと覚めてくれないだろ

うか。


「でも気持ち良かったんでしょう?

 いいんだよ、お兄ちゃん。

 だってここは夢の中だもん。

 お兄ちゃんがどんなに気持ち良くなって

 喘いで乱れたとしても、誰も文句言わな

 いよ?」


 麗の目を見られなくて目を背けていたの

に、麗の掌がそっと頬を撫でて、唇をくす

ぐったいキスで塞がれた。


「そう、だけど…」


 でも怖い。

 胸を弄られるのとも後ろを穿たれるのと

も、まして高ぶりを扱かれるのとも違う感

覚。

 誰にも暴かれるはずもない場所を犯され

る背徳感。

 他人の手で神経に直接触れられて、自分

の意志とは関係なく射精感を引き出される

行為。

 何よりも新しい快楽を覚えることで、も

うその他の事にも歯止めが効かなくなりそ

うな予感。

 でも不安でいっぱいの俺に麗は優しい声

音で囁いた。


「いいんだよ、お兄ちゃん。

 夢の中でどんなに乱れても喘いでも、誰

 もお兄ちゃんを責めたりしないから。

 お兄ちゃんのせいじゃないから。

 これは誰にも知られない、お兄ちゃんと

 ぼくだけの秘密。ね?」 


 “秘密”と甘い声が囁く。

 艶を含んだ吐息が耳を撫でて、裏筋をな

ぞる指先に撫で上げられてゾクゾクと震え

た体が考えるより早く答えを選んでいた。





[*前][次#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!