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悪魔も喘ぐ夜
*


 どうしても家の前まで車で送ると言い張

るクロードを何とか説き伏せて、自宅の傍

の路地で下ろしてもらった。

 ただでさえ登校の件で家の中の空気がギ

スギスしているのに、その最たる原因であ

るクロードに送られて帰ってきた、なんて

一触即発の空気に引火させてしまう。

 “下校帰りの寄り道を加我や高瀬と楽し

んできた”

 どんな嫌味を言われるにしても、報告す

るのはそれだけでいい。

 罪悪感が胸をつつくけど、別に嘘を言っ

ているわけではないから。


「ほな、また明日学校でな?」

「うん。おやすみ…」


 母さんが残していった“お守り”の件も

気になるから、いつもとは違う心境でクロ

ードと別れの挨拶を交わした。

 その黒い車を見送ってから自宅へ向かう。

 何となく小さくなってしまう声でただい

まと声をかけながら玄関のドアを開くと、

2階からバタバタと麗が下りてきた。


「お兄ちゃんっ!?

 遅いから心配したよっ。

 大丈夫?何もされなかった?」


 靴を脱いで土間から上がるといつもの調

子で抱き着かれて体がビクッと震えた。

 いつもならなんてことはないのに、どう

してこんなに体が硬くなってしまうのか。


「あぁ、ごめんごめん。

 加我達とちょっと放課後寄り道してきた

 んだ。

 それでちょっと遅くなっちゃって…。

 麗が心配するようなことは何もなかった

 から大丈夫」


 できるだけ不自然だと思われないように

笑顔を作って、いつも通り頭をぽんぽんと

叩く。

 しかしまだ麗の心配げな双眸は俺を見上

げて視線を外さず、制服のシャツに鼻を寄

せた。


「…本当に?」


 とても聞きづらそうに俺を見上げてくる

麗を見て、“あぁ、匂ってるのか”と直感

した。

 確かにコートを出てからシャワーは借り

たけれど、カラオケを出てからはそのまま

帰ってきてしまった。

 あれだけ乱れてしまった後で何故そこに

気づかなかったのかと自分の迂闊さを呪っ

た。

 そう理解したら麗とくっついている今こ

の瞬間も麗に無言で抗議されているようで

居心地が悪く、慌てて体を離そうとしたけ

れど麗が腕の力を緩めてくれなかった。


「お兄ちゃん、最近なにか隠し事してな

 い…?」


 心臓が飛び跳ねた。

 今日の、今のことだけじゃないと麗の透

き通った目が訴えている。

 とても言い辛そうに、でも何か確信して

いるように。

 もしかして、必死に隠しているつもりで

いたけどバレてる…?

 何をどう説明すればいいのか、それとも

気のせいだと強引に押し切ってしまえばい

いのか。

 どちらも決めかねて、考える素振りをし

ながらその直視に耐えきれずに視線をそら

す。





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