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悪魔も喘ぐ夜
*


「ほな帰ろか?どこに寄って帰るん?」


 了承したわけでもないのに当たり前とい

う顔をしてクロードが歩き出す。

 肩を掴まれたままの俺はそれに押される

感じで歩き出さなければならず、掴んでい

た加我の手を渋々離した。


「桐生はどこか寄りたいところあるか?」

「え?あ…まだ考えてなかった」


 寄り道に誘われても最近は家のこととか

体のことでバタバタしていてまともに遊び

にも出られなかったから、実際にどこに行

こうかまでは具体的に考えてなかった。


「じゃあ駅前のR1にでも行こうか?」

「あぁ、いいな。そうしようか」


 R1はボーリングやダーツみたいなもの

からテニスやバトミントンといった本格的

に体を動かすスポーツまで幅広く遊べる総

合スポーツ施設だ。

 ラケットやボールなど基本的なものは全

部貸し出してくれるから気軽に立ち寄れる

し、料金はどのスポーツを選んでも時間制

だから同じだしセット料金と学生団体割引

を使えば安くもできるので学生の間では人

気がある。

 自分の下駄箱の前まで来ていつまで掴ん

でいるんだとクロードの手を引っぺがすと

あっさりクロードの手が離れた。

 まぁ自分も履き替えなきゃいけないから

当たり前なんだけど。


「R1って何?何するとこなん?」

「スポーツ施設だ。

 一通りのスポーツは大概できる」

「あぁ、運動しに行くん?

 俺もいい加減、体なまっとるからちょう

 どええわ」


 クロードはそう言いながら腕を伸ばして

伸びをするけど、さりげなさを装ってその

腕を俺の肩に回してこようとしたので先に

履き替えて待っていた加我の隣に早足で逃

れた。

 昇降口を出ると茜色の空の下、見知った

後姿を見つける。


「高瀬?今帰りか?」


 しつこいクロードの腕から逃れたかった

のもあって足早に駆け寄ると、イヤホンを

外しながら高瀬が振り返った。

 手に持っていた本は表紙がチラッと見え

ただけだけど、アルファベットが並んでい

たし洋書かもしれない。


「あぁ、桐生か。

 そうだね、今から帰る所だけど?」

「俺達これから駅前のR1に行くんだけど

 一緒にどう?」

「そうだな…じゃあちょっとだけ」


 高瀬は後ろからついてきている二人を振

り返ってメンツを察したのか、スマホで時

間を確認しながら手に持っていた本を鞄の

中にしまう。

 高瀬も一緒に行っていいよなと確認をと

ると2人ともあっさり快諾してくれた。

 そうして4人で連れだって歩き出す。

 他愛もない会話を楽しめたのはただ単に

人数が増えたからじゃなくて、道幅の関係

で2列に分かれたことで必要以上にクロー

ドに絡まれなかったからだと思う。

 



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