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悪魔も喘ぐ夜
*


 意識して息を吐き出すとそれを見計らっ

たようにクロードの指先が少しだけ中に入

り込んだ。


「んー…まだ赤いなぁ。

 傷は…ついてへんけど」

「クロードが、したんだろ。

 あれだけ好き勝手揺さぶっておいて、そ

 う簡単に腫れがひくわけないしっ」


 言いながら思い出してしまい思わず語気

が荒くなったけど、クロードはそんなの気

にするそぶりもない。


「ほんまに好き勝手やっとったら、駆が俺

 の前から消える余力なんて残さへんて。

 駆のことが好きやからこんなに我慢して

 んのに、なんで分ってくれへんの?」


 苦笑いすら固まるようなことを当たり前

みたいな顔でサラリと言ってのけた直後

に、まるで不本意だと拗ねられて言い返す

言葉が見当たらなかった。

 拗ねるそのそぶりさえ、どこまでが本心

でどこまでが作り物なのかも俺にはわから

ないから。

 俺に分かるのは、俺が何を言おうが何を

しようがクロードは好き勝手するってこと

だけだ。


「くっ…」


 まだ腫れのひいていない蕾は乾いた指先

をたった一本受け入れただけでひきつって

しまう。

 出入りする度に捲れる縁がその摩擦にキ

ュッとすぼまった。


「どないしたん?」

「んっ…ひっかかる、から…」


 水分がほしい。

 それで指が滑れば、このヒリヒリする痛

みからは解放される。


「でも今ローション無いねん。

 人を呼ばれたら嫌やろ?」


 クロードがやけにゆっくりと指先の先の

方まで抜きにかかって顔が引きつる。

 しかしだからと言って、こんな状況のま

ま誰かが部屋に入ってくるなんて考えたく

もなかった。

 首を横に振って再び押し入ってくるであ

ろう指先を待っていると、ふとクロードの

指が止まった。


「あぁ、でも一つだけあったわ」

「なに…?」


 解けかかった体の緊張が蕾の擦れる摩擦

で再び硬くなっていく。

 これから一度家に帰るし、学校にも行か

なきゃならない。

 少しでも体の負担は減らしたかった。

 問いかけると、わずかにクロードの口角

が上がった気がする。





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