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悪魔も喘ぐ夜
*


「そないな事言われてもなぁ。

 見ただけじゃわからへんこともあるや

 ろ?」


 クロードが触れてきた指先が背中から腰

に掛けてつつつ…と滑り、一瞬ビクッと震

えたけどそのまま指先はあっさり離れた。


「駆が嫌やったらええよ?

 無理強いはせぇへんってさっきから言う

 てるやろ?

 まぁその代わり、駆の“お願い”は聞い

 てやれへんけどな?」


 クロードの浮かべる涼しい表情がとても

憎らしい。

 足元を見られてると思うし、俺が否と言

えないのを嫌と言うほどわかっている発言

だ。


「あぁ、それとあの二人には慰謝料払って

 もらわななぁ」


 それなのにクロードはそれでも飽き足ら

ずに言葉を重ねてきた。

 涼しい表情のままその唇から出てきた言

葉に俺は一瞬耳を疑った。


「慰謝料って…?」

「当たり前やろ。全治2週間やで?

 ろくな確認もせんと暴力沙汰起こしたら

 あかんやろ。

 この国では傷害罪って言うんやなかった

 っけ?」


 耳の奥がグワングワンする。

 耳慣れない言葉に思考がついていかな

い。

 そんな俺を無視してクロードは言葉を続

ける。


「刑法第204条 人の身体を傷害した者は、

 15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に

 処する、やっけ?。

 診断書とって被害届を出せば、実刑まで

 いかなくても進学や就職には不利やろう

 なぁ。

 日本が犯罪者に優しい国やったら別やけ

 ど」


 日本語を聞いてるはずなのに内容が頭に

入ってこない。

 クロードがその気になりさえすれば二人

の将来なんて容易く握り潰されるのだと、

竦み上がった心臓で理解した。

 最初からクロードを拒否できる選択肢な

んてなかったんだ。

 ただクロードが手札を見せなかったから

勘違いしていただけで。


「ヒーローごっこはな、ガキの遊びや。

 大人の世界に持ち込んだらあかん。

 持ち込むんやったら持ち込むなりのリス

 クちゅうもんを覚悟せな、な?」


 クロードが酷く遠い。

 いつも学校でふざけているクロードと同

一人物なのかと疑いたくなって、それはた

だの現実逃避だと頭の片隅で理解する。


「俺はオトナやから、駆にとって一番呑み

 やすい条件を提示してるつもりやで?

 こんだけ実害被っても、駆が嫌や言うん

 やったら被害届出さんでおいてもええ。

 親兄弟に手を出さんといてくれって言う

 んやったら、それも聞いたる。

 けどな、それやったらそれで俺の条件も

 呑んでもらわな。

 駆が出来ひんようなことは言うてないや

 ろ?」





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