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悪魔も喘ぐ夜
*


 ややあって、ようやく訝しむような声音

で尋ねてきた。


「それは母さんに確認はとったんでしょう

 ね?」


 とても信じられない…きっとそれが本音

だろう。

 俺だってそうだったから、その気持ちは

よくわかった。


「うん。

 母さんには単純計算したらそうかもしれ

 ないって言われた。

 でもそれぞれ遺伝の割合は違うだろうか

 ら、もしかしたら100年かもしれない

 し、逆に300年かもしれないとは言わ

 れた」


 麗がシャワーに入ったタイミングで母さ

んを捕まえて、クロードに言われたことを

話した。

 そうして返ってきたのがそういう答えだ

ったんだ。


「髪の色だったり、目の色だったり、どの

 部分がどのくらいの割合で遺伝してるの

 かはわからないから、寿命に関しても一

 概には言えない。

 だけど…」


 “だけど今まで見てきて、秀や麗には淫

魔の血が強く出ているような気がするの。

 もし300年生きる可能性があるのなら

きっと…”


 母さんはその先を言わなかった。

 言わなかったけど、何となくわかってし

まった。

 イギリス人らしい外見の母さんが純血の

淫魔の遺伝子をもっているのだ。

 だとしたら、その容姿に近ければ近いほ

どその遺伝子を強く引き継いでいる可能性

がある。


「300年、ですか…」


 兄貴がぽつりと呟いた。

 全てを察したような横顔で。

 幼い頃にはよく母親似だと言われた、そ

の横顔で。


「クロードに、これからどうするんだって

 言われたんだ。

 10年後ならまだ誤魔化せるかもしれな

 い。

 でも50年経っても、100年経っても

 老いない体で、人の社会で生きていける

 のかって」


 兄貴は考え込むようにして押し黙ったま

ま何も言わなかった。

 俺は沈黙が広がる前に続きを口にした。


「母さんは実家と上手くいってないんじゃ

 ないかな…。

 ほら、今まで何度も言ったのに結局俺達

 は一度も母さんの両親には会ったことな

 いだろ?

 手紙の返事がこないのも、もしかした

 ら…」


 これは聞きづらかったから母さんに直接

聞いたわけじゃないけど、言われてみれば

確かに今までおかしいと思っていたことが

“追放”という理由を当て嵌めてみればす

んなりと理解できてしまう。

 そして淫魔である母方の実家が頼れない

なら、これから先どうやって生きていけば

いいんだろう。

 母さんさえ誤魔化すのに苦労している、

老いない体で。





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