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悪魔も喘ぐ夜
*


「それに…もし今兄貴と同じ歳が良かった

 っていうなら、麗は俺の弟じゃなくなっ

 ちゃうだろ?」

「うーん…、それはそうかも…?

 やっぱり、お兄ちゃんは僕にとってはお

 兄ちゃんだし」


 大きな目で俺を映す麗の表情から影が消

えていく。

 あともう一押し。

 被害云々を抜きにして考えれば、そう思

って実際に行動に移せる人がどれだけいる

だろう?

 危険を顧みずに助けにきてくれたという

のに、自分の無力さを嘆いてほしくない。


「な?

 俺は麗が弟でよかったよ。

 俺の自慢の弟だ」

「お兄ちゃん…」


 麗の表情に赤みがさしていく。

 まもなく満面の笑みが浮かび、えへへと

照れたように笑い声を出す。

 しがみついていた右腕が外れて、右手が

頬に触れた。

 そして顔が近づいてくる。

 それがキスだと察した時にはもう麗の唇

に指先をのせていた。


「ダメだって。

 クロードと約束してあるんだ」

「あんなことがあったのに、その約束がそ

 のまま守られるとは思えないよ」


 キスを阻止された麗は不満げに唇に触れ

た指を掴んで口元から離す。

 麗の言い分もわかるし、兄貴にどれだけ

やられたか分からないクロードがどうでて

くるかも今はわからないけど…。


 もう一度だけ、信じたいんだ。

 今度は裏切らないと約束したクロード

を。


「じゃあキスだけ。ね?」


 どう麗を説き伏せようかと考えている俺

に麗の方が折れてきた。

 どうしてもキスしたいと大きな目が俺を

見つめてくる。

 その物言う視線に躊躇して…。


 …ま、まぁほっぺにチューくらいなら、

向こうじゃ挨拶みたいなもんだろうし…。


「頬になら…」

「お兄ちゃん、大好き」


 ニコッと満面の笑みを浮かべた麗が顔を

近づけてきて、頬…というよりは唇すれす

れのところにキスを落とす。

 唇に触れるんじゃないかと一瞬身構えて

しまい一瞬だけ心臓が跳ねた。


「…唇には、触れてないよ?」


 “ね?”と麗が悪戯っぽく笑う。

 全てを見透かしたようなキスに、直に唇

にされるよりドキドキしてしまって俺の方

が焦った。





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