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悪魔も喘ぐ夜
*


「いや、車で送るわ」

「うん?いいって。兄貴が来るし」

「それが嫌やねん。

 まるで俺が駆を取られるみたいやん」


 …だったらあんな電話しなきゃいいの

に。


 クロードのプライドのツボが分らない。

 でもあえて追及はしないことにした。

 兄貴が来たら何とか頑張って部屋を出よ

う。

 どれほど近い距離と言えど、密室の車内

でまで二人に挟まれるのは勘弁してほし

い。


 コンコン


 静かなノックの音が響く。

 ホテルの従業員だろうか。

 でもこの部屋の主はクロードだから俺が

出ていくのもおかしい気がしてクロードを

見上げたら厳しい目つきでドアを見つめて

いた。


「クロード…?」

「シッ。誰やろ。

 アポは入ってないねんけどな」

「え…ホテルの人じゃないのか?」

「“Don't Disturb”のカードがかけてあ

 んねん。

 それにホテルマンやったら、ノックした

 まま何も言わへんのはおかしいやろ」


 クロードは俺にここにいろと合図をし

て、足音を忍ばせてドアに向かっていく。

 俺はと言えばさほど危機感もなく、ソフ

ァの上に忘れられていた携帯を見つけても

う一度電源を入れた。

 部屋まで着替えを届けてくれるように兄

貴に頼まないといけないからだ。


「ルームサービス?頼んでへんけど」

「いえ、確かにそのようにご注文が…」

「そもそも“Don't Disturb”のカードは

 …あれ?」


 やはりノックの主はホテルマンだったよ

うだ。

 なんだか揉めてるようだけど。


「おかしいなぁ。

 カードかけといたはずやのに」


 クロードがブツブツ言っている間に着信

が繋がった。


「あ、兄貴?悪いんだけど」

『今すぐ部屋を出なさい』

「へ…?」


 言いかけで遮られた。

 元より全部聞くつもりなどないというタ

イミングで兄貴の声が割って入る。

 今すぐと言われてもドアのところではク

ロードとホテルマンがやりとりしていてど

うやって出ていけと言うのか。





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