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悪魔も喘ぐ夜
*


「それでも…駆が誰にも触らせへんっちゅ

 うなら、待ったってもええよ?

 その代わり、それを違えたり逃げ出した

 時には…何の保証もせえへんけど」


 先ほどとはまた違う、刃物のような空気

が背中をなぞる。

 その温度のない目が一切の容赦はしない

と俺を見下ろす。

 干上がる喉を無理やりごくりと鳴らして

拳にギュッと力を込める。


 …待つって言うなら、今はそれで手を打

つしかないんじゃないか?

 今逃げ出そうとしても、クロードが本気

になったら容易く捕まってしまうだろう。

 下手を打つくらいなら、クロードが譲歩

すると言っているのだからそれで今は引こ

う。


「本当に何もせずに待っててくれる?

 誰にも、何にも、手出しさせない?」

「当たり前や。

 どうせ他にアテなんてあらへんやろ。

 駆がちゃんと納得して俺の所に来られる

 までは何もせえへんよ。

 その足で俺の所に来てくれたら、もう離

 さへんし」


 散々俺を脅して震え上がらせたというの

に、それすら忘れたようにニッといつも通

りの笑みを浮かべて俺をぎゅうぎゅう抱き

しめた。

 いつも人懐っこい笑顔で俺を振り回すそ

の顔の下に隠れていたもの…それは今の俺

には歓迎できるようなものではなかった。

 けれど、そういう下地がちゃんとあって

のクロードなのだろうとも思う。

 ただヘラヘラ笑っているだけじゃない。

 その笑顔の下でちゃんと計算していざと

いう時の為に爪を研いでいる。

 それを見誤った者が爪を突き立てられて

痛い目に遭うのだろう。


 もし今クロードに言われなかったとして

も、いずれは向き合わなきゃいけなかった

問題なんだ。

 今後どうするのか、クロードに否と言う

ならその対処まで含めて母さんたちと話し

合わなければならない。

 半魔なのは兄貴や麗も同じだから。


「とりあえず…今日は帰らせて。

 きっとみんな心配してるだろうし」

「帰したないんやけどなぁ…」


 甘えた声音で頬擦りしてくるけど、今

は喉が引きつっていて笑えない。





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あきゅろす。
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