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悪魔も喘ぐ夜
*


「ショックなん?

 顔、真っ青やで」


 気づいたら傍に戻ってきていたクロード

に抱きしめられていた。

 その腕をちっとも優しいとは思わなかっ

たけど、かといって振り切るほどの気力も

ない。


「本題はここからやねん。

 セシリアの実家に頼れないんやったら…

 この先どうやって生きていくん?

 いつまでも老け込まない外見を誤魔化し

 て生活していたとしても10年が限度な

 ら、その後の170年は?

 駆のフェロメニア体質は、きっと死ぬ直

 前…一気に老け込むまで消えることはあ

 らへんよ。

 それまで自分で自分の身守れるん?」


 本当に心配しているんなら、そんなに一

気に話さないでほしい。

 もう頭の中はグチャグチャで何かを考え

る余裕なんかない。


「そないに泣きそうな顔せんでええよ」


 俺の顎を引いて歪む俺の顔を覗き込んだ

クロードが場違いな明るい笑みを浮かべて

いる。

 物も言えなくなっている俺に優しげに笑

いかけて、耳から甘い毒を流し込む。


「駆が俺のものになるんやったら、俺がこ

 れから先ずっと安心して暮らしていける

 環境を整えてやれるし」

「安心…?」


 声が震えた。

 まるで藁でも掴むようで、そのまま掴ん

だところで沈むだけじゃないかという懸念

が言った先から頭の隅に生まれる。


「せや。

 俺やったら駆が普通に暮らしていける場

 所を用意してやれる。

 淫魔としても、フェロメニアとしても、

 何不自由のない暮らしや」


 目の前にチラつくのは蜘蛛の糸なのか。

 よろめいて凭れかかったら、そのまま雁

字搦めにされてしまう罠じゃないのか。


 “クロードは嘘つきだ”


 その考えだけでようやく最後の一線を越

えようとするのを踏みとどまる。

 今の話がどこまで本当なのか、本当に他

に何も方法はないのか、それを直接母さん

に確かめてから答えを出しても遅くないは

ずだ。


 落ち着け、落ち着け。

 今はまともな判断はできないんだから、

無理に答えを出さなくていい。


 深呼吸をしてなるべく冷静でいようとす

る。





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あきゅろす。
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