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悪魔も喘ぐ夜
*


「ところで…駆はセシリアの本当の歳って

 聞いたことあるん?」

「へっ…?」


 いきなり変なところに話が飛んで思わず

ポカンとしてしまった。

 まだクロードが俺の言い分を聞いてくれ

たという驚きから抜け出せない間の出来事

で頭がついていかない。

 どこをどう繋げば母さんの名前が出てく

るのか、皆目さっぱりだ。

 しかしクロードの表情には余裕めいたも

のが滲んでいて、戸惑いつつも正直に答え

ることにした。


「えっと…確か、36くらいじゃなかった

 かな…」

「36か。よくそれで押し通せるなぁ」

「な、なんだよ?」


 クロードの笑い方はどこか小馬鹿にした

ような雰囲気で思わずムッとして問い返

す。

 しかしクロードはそのままの笑みを俺に

向けた。


「それで?駆はそれを信じてるん?

 あんなにピチピチで36て」

「あ、当たり前だろっ?

 そりゃちょっとは若く見えるかもしれな

 いけど、俺の母親だし、そのくらいいっ

 てても全然おかしくないじゃないか」


 クロードが声を出して笑うのをムスッと

しながら待っていたら、クロードは口の端

を引き上げたまま再び口を開いた。


「大ハズレや。

 セシリアは加我や高瀬のジジババより年

 上やで?」

「は、はぁっ!?」


 耳を疑った。

 今ですら大学生と間違われるほど年若く

見られるというのに、実年齢がさらに20

歳も上だなんて信じられるわけない。

 しかしクロードはそんな俺の視線を受け

ても涼しい顔でソファに腰を下ろした。


「純血の淫魔の寿命教えたろか?

 300歳や。

 もし病気も患わず事故にも遭わなければ

 400年生きる淫魔もいる。

 人とは生きる時間の長さが違うねん」


 よ、よんひゃくねんって…。


 驚きに困惑が割って入ってきて頭の中が

軽くパニックに陥る。


「その顔やとセシリアからはなんも聞いて

 へんのやろ?」


 隣に座れと促すクロードを動かず凝視し

ていたら、軽く肩をすくめて諦めたようだ

った。


「18歳とか20歳までくらいまでは、人

 とまったく同じように成長すんねん。

 でもそのくらいの歳になったら、そこで

 ピタッと成長が止まる。

 そこから何百年もかけてゆっくりゆっく

 り老いていく。

 最後の数年で一気に老け込んで足腰が弱

 くなって死に至るねん」


 母さんがあまりにも普通すぎるし、淫魔

に特殊能力があるのを知ったのもつい最近

のことだから急にパッと300年とか40

0年とか言われても戸惑うばかりだ。

 けれどクロードの言いたいことはその先

にあるはずで、俺は黙ってクロードの言葉

を待った。





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あきゅろす。
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