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悪魔も喘ぐ夜
*


 俺の頬を掌で撫でながら一瞬不安げに揺

れたその表情はすぐに消えて、一番奥まで

いっぱいにしたまま麗の腰の動きが止まり

俺を抱きしめたままぴったりと体を合わせ

てきた。

 トクントクンと肌越しに麗の鼓動を感じ

る。


「でも逆にそういう存在にぼくがなれたら

 …そう思ったら心がね、とってもあった

 かくなったんだよ。

 あぁ、お兄ちゃんのこと好きだって改め

 て思った」


 そう言って微笑む麗は、やはり俺の知ら

ない麗で…。

 だけど拒むことすら躊躇わせるような幸

せそうな笑顔に心が詰まった。


 抱き締めたまま麗が唇を重ねてきた。

 繰り返し唇を吸われ、吐き出す吐息すら

惜しいようにその唇の向こうに消える。


「今はまだ受け入れられなくてもいいよ。

 お兄ちゃんの中では、まだ“今までのぼ

 く”のイメージが強いんだと思う。

 ぼくが必死で演じてきた“可愛い弟”が

 お兄ちゃんの中のぼくから剥がれ落ちな

 いんだと思うから。

 それを塗り替える為にぼくはぼくの出来

 ることをしようと思うんだ。

 …お兄ちゃんがその心で誰か一人を選ん

 でしまうまでは。いいよね?」


 大人びた笑顔を浮かべる麗に間近で見ら

れて、それでも嫌とは言えなかった。





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あきゅろす。
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