[携帯モード] [URL送信]

悪魔も喘ぐ夜
*


「ぼくね…ずっと自分の能力が嫌で嫌で仕

 方なかったの。

 “なんでぼくだけ?”ってずっと思って

 た。

 見たくもない誰かの夢に呑まれて、それ

 ばかり繰り返すことが本当に辛くてたま

 らなかった。

 でもお兄ちゃんがいたから…お兄ちゃん

 がいてくれたから、ぼくはぼくで居られ

 たんだよ…」


 その張った場所で弱いポイントを擦られ

て呑み込むものをキュンと締め付けてしま

いながらも麗の静かに熱を帯びる声が耳に

届く。

 何を言いたいのかはよく分らなかったけ

ど、何となく口を挟んだらいけない気がし

て体内を慣らすようにゆっくりと動く猛り

を受け入れたまま麗が喋るのをただ黙って

聞いていた。


「最初はね、兄さんにお兄ちゃんをとられ

 たくなかっただけだった。

 兄さんがお兄ちゃんを壊して、自分だけ

 のものにしようとしているのが許せなか

 った。

 でもね、今日あの人が来た時に思ったん

 だ。それだけじゃないんだって」


 深くまで繋がったまま麗が俺に覆いかぶ

さるように体を倒してくる。

 どうしていいのか分からずにいたら、麗

にギュッと抱きしめられた。


「お兄ちゃんがお兄ちゃんのままなら、た

 とえ兄さんにとられてもお兄ちゃんの中

 でぼくの居場所はなくならないって思っ

 てた。

 でもね、きっとお兄ちゃんは恋をしたら

 変わっちゃう。

 今まで家族が占めていた割合も減って、

 恋人のことで頭がいっぱいになっちゃ

 う。

 そうしたらお兄ちゃんの中でぼくの居場

 所がどれだけ残ってるだろう…?

 そう思ったらね、急に怖くなって」





[*前][次#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!