悪魔も喘ぐ夜
*
「おやすみ、お兄ちゃん」
ちゅっ
可愛らしいリップ音をたてて麗の唇が離
れた。
不穏な空気など最初からなかったみたい
に。
「お、おやすみ…」
一抹の不安は抱えながらも大人しく寝る
という麗にそれ以上の追及は無意味だと悟
って俺も目を閉じた。
気がつくと俺は白い空間にいた。
現実味のない浮遊感、足元に広がる綿の
ような雲。
これは夢なんだなと理解するのにさして
時間はかからなかった。
ふわふわと空を漂い、ほどよい雲のふく
らみを見つけてそこに降り立った。
眠い。
どうもここは気持ち良すぎて寝てしまい
そうだ。
体を横たえると裸の肌に触れる雲が心地
いい。
そのままうつらうつらしてしまいそうに
なりながら、毛布を体に掛ける要領で周囲
の雲を引き寄せて体の上に乗せた。
全裸の体をすっぽりくるんでしまうとあ
まりの気持ち良さに意識が遠のいていく。
[*前][次#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!