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悪魔も喘ぐ夜
*


 “苦しい、苦しい”とアピールするとよ

うやく腕の力は弱まるがまだ暗闇の中で憮

然としている空気が伝わってきた。



「ちゃんといい人が現れるから、それまで

 はまだ俺だけなんて世界を狭めるなよ。

 勿体ないだろ、麗にはまだいくらでも可

 能性があるのに」

「…お兄ちゃん以外の人なんていらないも

 ん…」


 拗ねた声でボソッと呟かれた声は俺の言

葉をハッキリと拒絶している。 

 だから俺は言わずにおこうと思っていた

ことを言うしかないのだろうかという気に

なった。


「母さんがさ、言ってただろ?

 フェロメニアのこと、色々。

 …その体質が淫魔を惹きつけるなら、麗

 や兄貴やクロードの心理に作用してない

 とはどうしても思えないんだ、俺」

「どういうこと?」

「つまり…甘い匂いを心地いいと感じてそ

 れを欲する気持ちを恋と勘違いしてるん

 じゃないかって。

 淫魔にとって抗えない程の香りなら錯覚

 を起こすことだってあるだろうし」

「それはないよ」


 拗ねていたはずの麗の冷静な声が静かに

響いた。


「だってぼく、お兄ちゃんが甘い香りをさ

 せ始める前からお兄ちゃんのこと好きだ

 もん」





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