悪魔も喘ぐ夜
*
いつもの日常にやっと戻れたと思った。
口うるさい嫌味な兄貴でも、いないとや
っぱりダメなんだと痛感する。
でも…全てが元通りになったわけじゃな
かった。
思えば兄貴はあの事件を境に、笑わなく
なっていた。
いや、まったく笑わない訳じゃない。
優等生として先生や友達に、よき兄とし
て両親や俺達に笑いかけはする。
でもそれは上辺だけのもの。
家族を相手にしてすら、笑顔のどこかに
影が滲んでいた。
心の底から屈託なく笑う顔はもう長いこ
と見ていない。
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