悪魔も喘ぐ夜 * 「そうね…。それは反省しているの。 もし駆が純血の人間で、フェロメニアの 能力が開花したのなら絶対に言ったわ。 言って…きっとこの家から外には一歩も 出してあげられなくなっていたと思う」 「い…一歩も…?」 「えぇ、一歩もよ」 まさか…と信じられなくて尋ねるが、母 さんは静かな顔で揺るぎなく頷いた。 「それだけ能力を開花させたフェロメニア は香ってしまう、ということなの。 そこに存在するだけでどうしようもなく 淫魔を誘惑し、手を伸ばさずにはいられ ないほど狂わせてしまう…。 そして手を出してしまったら最後、それ 以上の香りと甘さで淫魔を狂気に堕とす と聞くわ」 静かに語られる話を黙って聞いているし かなかった。 昨日までの俺なら“それは言い過ぎだろ う”と思ったかもしれない。 でも、知ってしまった。 純血の淫魔の体液がどれほどにこの体を 熱くし、狂わせるものなのかを。 もし淫魔がフェロメニアを狂わせるのと 同じだけフェロメニアも淫魔を狂わせるの だと仮定したら… …お互いにイキっぱなしになる…。 文字通り、逃げ場のない快楽地獄。 理性も、心さえも置き去りにして命が尽 きるまで続くのだろうか、それが…。 [*前][次#] |