悪魔も喘ぐ夜 * 「まず…駆に謝らないといけないわね」 「え?」 母さんに謝られなければならないことな んかあっただろうか? 話の始まりが思いもよらぬところで、俺 は母さんの次の言葉を待った。 「フェロメニアについて、まだ駆に話して いないことがあったの」 “この上まだ何かあるのか” ズシリと胸が重たくなるのを感じながら 母さんをじっと見ていた。 「淫魔とフェロメニアは互いに狂わせ合う 関係にある…これは以前話したわね?」 「うん…」 「淫魔は快楽と引き換えに人から生気を吸 う…これが通常の関係なの。 でも相手がフェロメニアだと、そうはな らない。 フェロメニアの放つ香りに、フェロメニ アの生気に、淫魔は敏感に反応する。 それが死をもたらす甘美な快楽だと知っ てもなお、求めてやまない。 そんな淫魔が多いから、フェロメニアは 発見されると捕えられ淫魔の上流貴族に 売られるケースが多い」 「そんな大事なことを、何故今まで黙って いたんですか!!」 滅多に声を荒らげない兄貴が口を挟んで きた。 その視線で射殺すんじゃないかという鋭 さで母さんを見ている。 [*前][次#] |