悪魔も喘ぐ夜
*
「駆、待ってや!ちゃんと話をっ」
踵を返して家に入ろうとした俺に触れよ
うと伸ばされた手は兄貴の腕に掴まれて阻
止された。
「お引き取り下さい。見苦しいですよ?
駆の迷惑も考えられないんですか?」
「俺に指図すんなやっ!」
飽きずに言い争う二人を残して玄関に向
かう俺に麗がついてきた。
玄関の絨毯マットの上に兄貴の鞄をドサ
ッと下ろす。
あぁ…この荷物みたいに変な体質も放り
出せたらいいのに…。
「お兄ちゃん…」
「シャワー、浴びてくる。
夕飯いらないって母さんに言っておい
て…」
今は誰の顔も見たくなかった。
ただ何も考えずにゆっくりと休みたかっ
た…。
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