悪魔も喘ぐ夜
*
唇を噛んで溢れそうになるのを堪える。
一番辛いのは俺じゃないと心の中で繰り
返して。
ゴソ…
目の前の体が初めて動いた。
泣きそうだったことも忘れて兄貴が起
き上がって目の前を掌でトントンと叩く
のを眺めていた。
どうやらここに来い、ということらし
い。
溢れそうになっていた目元をさっと拭
ってから二段ベッドの階段を上りきって
兄貴の目の前に座…ろうとしてバランス
を崩し、手をついて体を支える。
兄貴の両腕が伸びて俺を抱きしめてい
た。
「兄さん…?」
全てが無言のままで、そんな兄貴の意
図が分からなくて困惑する。
しかしそれ以降も兄貴は一言も言葉を
発しなかった。
だから俺も黙って、兄貴の気が済むま
で兄貴の頭を撫でていた。
いつも母さんがそうしてくれるように。
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