悪魔も喘ぐ夜
*
玄関のドアを開けたところでエンジン
音がした。
家の前で停まった車の気配に振り返る
と、見覚えのある黒い車体。
「……麗、先に家に入って兄貴にメール
しといてくれるか?」
「え?お兄ちゃん、どうかしたの?」
「話は後で」
振り返って尋ねる麗の背中を押している
間に、車から先ほどまで顔を合わせていた
二人が車から降りてきた。
「…ハァ。なんや、帰ってきてたんか。
戻ってベッドが空だったからめっちゃ焦
ったわ。伝言でも残しておいてくれたら
ええのに」
「誰かさんがもっと早く解放しててくれた
ら違ってたかもしれないけど?」
「やっぱ起きるまで傍にいなかったら拗ね
てるん?雑用の方を任せればよかったん
かな、カイルに」
話が噛み合わない。
でも麗には聞かせたくなくて、玄関のド
アを半ば強引に閉めてから車の方へと歩み
寄った。
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