悪魔も喘ぐ夜
*
「なんだよ、それ…。
そんなの知らない。わからない。
それなのになんで俺なんだ…」
「お兄ちゃんは苦しまないで。
そんな顔してほしいから言ったんじゃ
ないんだ」
麗の手が顔を上げるように促したが、俺
は顔を上げなかった。
そこにいるのは俺が知ってる麗じゃな
い。
俺が知らない大人びた…憂いを知ってい
る麗の顔。
手の中から何かがボロボロと崩れていく
ようで顔を上げるのは怖かった。
「…でも、覚えていて。
お兄ちゃんはぼくの希望なんだよ…」
麗は無理強いしなかった。
その代わりに髪にキスを落とした。
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