悪魔も喘ぐ夜
*
「ぼく、頑張るから…だからお兄ちゃんに
触れさせて。
ぼくが不安にならないように。
前を向いていられるように」
「麗…どうしてそうなるんだ…」
一度は期待してしまっただけに落胆は大
きい。
「どうして…どうして二人とも俺なんだ
よ…。
女の子でも、他の誰でも、いっぱい人は
周りにいるのに…」
頭を抱える。
でも、それで理解できるならこんなに苦
しんでいない。
「お兄ちゃんがお兄ちゃんだから、だよ」
どこかで聞いたのと同じことを麗は言っ
た。
理解しているのは本人たちだけで、俺に
はまったくわからない。
「お兄ちゃん…。
きっとお兄ちゃんにはわからない痛みを
ぼくは知ってる。
たとえその痛みを知らなくても、それを
癒してくれるのがお兄ちゃんなんだよ。
だからぼくはお兄ちゃんでないとダメな
んだ…」
麗が頭を抱えたままの俺を包み込むよう
に抱きしめた。
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