悪魔も喘ぐ夜
*
「…家族、かなぁ。
家族が今ある姿を壊したくない」
霧を手に掴むような曖昧さで言葉を紡
ぐ。
それを聞いた麗は苦笑いを浮かべた。
「な、なんだよ?おかしいか?」
「お兄ちゃんが望むなら叶えてあげたかっ
たけど、それは無理かなぁ。
だってぼくはお兄ちゃんが好きだもの。
お兄ちゃんを独り占めしてしまいたいく
らい好き。
だからお兄ちゃんの願いはぼくの願いと
一致しないんだよね…」
“残念だけど”そう言って困ったように
笑いながら、今度こそ唇に麗の唇が触れ
た。
「でもね、お兄ちゃんが望むなら叶える
よ。
いずれは家を出たりしてバラバラにな
る家族でも、それまでは“家族”でい
たいって望むなら」
「麗…!」
胸が震えた。
あぁ、麗はまだ大丈夫だった。
そんな手ごたえを掴んだ気がした。
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